喉が、あらんかぎりの力で、絞められたようだった。


完璧。それは、わたしが何度も、雨夜くんに当てはめてきた言葉だ。

雨夜くんは完璧すぎる。神様みたい。ずっとそう思ってきたし、実際に口にしてきた。


でもその“完璧”は、お母さんを恨む気持ちを昇華したかたちで。

雨夜くんが捨てられたトラウマから身を守る、よろいみたいなものだったんだ。


「だから……勉強に励んで、人当たりもよくして。周りから尊敬されるような人間を目指してきた。五歳のころから、ずっと順調にやってこられてたと思う」


雨夜くんは、感情を押し殺しているみたいに、低いトーンで言葉を並べていく。


「ここらで一番の進学校に行くことを目指してて……受かったら、〝完璧〟だってことをはっきり証明できる気がしてた。でも……」


そこから雨夜くんの言わんとすることは、聞かずともわかった。


目標のトップ進学校には、行けなかった。おばあさんの病気がわかったから。

昼間働きながら、夜間定時制に通う道しか……なくなったんだ。