そこからは走りに切り替えて、わたしも雨夜くんに続いて、病院を飛び出した。


「~雨夜くん……っ!」


息を切らしながら、必死で雨夜くんを呼び止める。

呼び声に気づいて立ち止まった雨夜くんが、こちらをゆっくりと振り返る。


「……!」


わたしに向けられたのは、笑顔だった。


でも、いつもとはまるで違うもの。

ゆがんだ顔を隠そうと、やむを得ずに貼り付けた……そんな笑顔で。


「……ごめん」


不自然な笑みと同じ、不自然につくろった声で、雨夜くんは言った。


「あんなとこ見せて……怖かったよね」


心臓のドクドクが、やまない。

胸が苦しくて、どうしたらいいか全然わからなくて。わたしはただ、ふるふると必死に首を振る。


「さっきはちょっと、突然だったから。だから、びっくりしただけで」

「……っ」

「永田さん、今日は色々迷惑かけちゃったね。ほんとに……あー……」


雨夜くんの声が、崩れて途切れる。

貼り付けの笑みが消える。お面みたいにぱらりとはずれて、苦しさにゆがんだ顔が、あらわになる。


「……だめだ、ごめん。いつもみたいに振る舞うの、無理だ」