「よ、よかった……」

「永田さん……怖かったよね。ごめん」


雨夜くんの言葉に、わたしはゆるゆると首を振る。


「ううん。大丈夫なら、もうそれだけでーー」

「雨夜さん」


わたしが最後まで言い終える前に、少し向こうから声がかかった。看護師さんだ。


「雨夜秀美(ひでみ)さんが安静をとっていらっしゃるお部屋にご案内します。今点滴を受けられていて、意識も戻っているので」


その申し出に、「お願いします」と頭を下げる雨夜くん。


看護師さん、そして雨夜くんの背中についていき、わたしも部屋に入らせてもらう。

室内には、腕に点滴をしてベッドに横たわっている、おばあさんの姿があって。


「おばあさん……!」


実際に無事を確認したことでさらに安心できて、情けないトーンの声を上げてしまった。


命に別状がなくてよかった。けれど病室の白いベッドにいるおばあさんは、なんだかますます病的に見えた。