『いつも涼がお世話になってます』
あの日、わたしに笑みを向けてくれたおばあさん。
お変わりないのかな。元気なのだろうか。
あれ以降雨夜くんから、おばあさんの病状について詳しくは聞いていないけれど……。
おばあさんの顔を脳内で描きながら、ふと、公園から視線を外したときだった。
「……っ」
息が、止まった。
体の動きも止まって、目だけがこぼれんばかりに開かれる。
公園から、雨夜くんの家のほうに向かう道。そこに、しゃがみこんでいる人がいた。
見覚えがある人。短髪白髪で、病的な細さ。
血の気が引いた。雨夜くんの、おばあさんだ。
でもおばあさんは、今さっきわたしが頭に描いていた様子とは違っていた。
とても苦しそうに、肩で息をしていたのだ。
「……っ、おばあさん!」
転びそうになりながら、わたしはあわてておばあさんのもとに駆け寄った。
そばにしゃがむと、おばあさんの虚ろな目が、わたしをとらえる。
「大丈夫ですか!?」
「あ……永田、さ――」
わたしの名前が、最後までしっかり呼ばれることはなかった。
おばあさんの目からは光が消えて……そのままおばあさんは、道に倒れ込んだ。
「お……おばあさん!おばあさん……っ!」