……今日は先に、場所取りをしておこうかな。
そう思ったわたしは、カウンターの向こうにある読書スペースに足を向かわせた。
さすが綺麗な図書館とあって、読書スペースは多くの人で埋まっている。
高校の図書室とは大違いだな、と脳内に図書室を思い浮かべたところで、無性に雨夜くんに会いたくなった。
雨夜くんに会っている時間は、いつだって本当に幸せだ。
プラスな気持ちばかりが心に生まれて、そのときだけは黒い気持ちを切り離すことができる。
大好きだなって、熱くもあたたかくもある気持ちに浸ることができる。
でも、雨夜くんはどうなんだろう。
わたしは雨夜くんに守ってもらって、気遣ってもらって、迷惑をかけることしかできていない。ここ最近なんて、とくにだ。
またマイナス方向に考えが進んでしまいそうで、わたしはきゅっとくちびるを結んだ。
今はきっと、考え事をするべきじゃない。
頭のスイッチをオフにするイメージをして、わたしは読書スペースのひと席に荷物を置くと、書架に本を選びに行った。