そうして電車に揺られること、三十分ほど。
わたしは、利用するのが三度目の駅に降り立った。
改札を出て右側に首を回すと、現代的なフォルムの大きな建物が、すぐ目に飛び込んでくる。
青々とした夏空と、黒い建物のコントラストが美しい。
早足でたどり着き、建物に入って自動ドアをくぐる。
鼻を通ったのは、本と木の融合した匂い。その匂いが、この場所で雨夜くんと偶然出くわしたときのことを、思い起こさせる。
あのときは、わたしはまだまだ、自分の気持ちをうまく声に出せなかった。
帽子を目深に被って、目を合わせるのもどぎまぎして。
そのときから考えると、わたしは変われたかもしれない。
でもそのときよりもずっと、わたしの心はささくれだって、内側には汚い雲がたち込めている。
すごく悪い、人間になっている。綺麗なものを、綺麗と思えなくなっている。
だからこそ、やっぱり今日は図書館に来てよかった。
立ち並ぶ書架や、その中にきちんと並ぶ本の光景は、わたしの心のささくれを、少しだけ癒してくれるから。