「永田さんの髪って、ほんとサラッサラだよね。梅雨の湿気に悩むことないでしょ、ムカつくわー」
「ええっ⁉︎ ご、ごめん……!」
「ぶははっ! 冗談だって!このあと体育じゃん?更衣室一緒行く?」
「……っ、う、うん……!」
そんな風に接してもらえる時間があることは、すぐに沈もうとしてしまうわたしを救ってくれた。
けれど休みの日は、雨夜くんも矢崎さんたちもいない。
ひとりで自分の内面に、向き合うしかないんだ。
「~は……っ」
七月二週目の土曜日。
例のごとく悪夢で跳ね起きたわたしは、カレンダーの【土】という文字を見て、尋常じゃない焦燥感をおぼえた。
だめだ、と思った。
今日家にずっといたら、きっとわたしは、美和のことばかり考えてしまう。何かしないと。どこかに行かないと。
なにか。どこか。思い当たるところは、ものすごくせまい範囲。
わたしの趣味といえば読書だ。だから、本の世界に逃げることしか思いつかなくて。