不審がらせてしまった。名前を知っている理由を焦って説明しようとしたとき、教室内から驚きの声が上がった。
「永田さん⁉︎」
振り向くと、雨夜くんが目を丸くして席を立っていて。視線が交わるなり、急いでこちらに駆けてきてくれた。
「どうしたの!?」
「あ……」
心配の表情で尋ねてくる雨夜くん。
わたしが夜間の教室に突然来たものだから、緊急事態が起きたと思ったのだろう。
あわてて、手の中のものを差し出す。
「えと、このカギ……図書室にね、落ちてて」
すると整った顔からは緊迫感が消え、代わりに申し訳なさがにじんだ。