雨夜くんからよく明山くんの話を聞いていたから、また本人を見ることができて、ちょっと感動だ。


……と、感動もいいけれど、カギを早く渡さないと。

でもこの場所から声をかけたら目立つだろうし、会話の邪魔をしてしまうことにもためらいを覚える。

そのときだった。


「あの、どうかしましたか?」

「〜っ⁉︎」


急に背後から話しかけられて、わたしはヒッと小さく飛び跳ねてしまった。


驚き顔で振り返って、またさらに驚く。

わたしの後ろにいたのは、おじいさんだった。

小柄で柔和な顔立ちに、シャツのボタンはきちっと上までとめられていて、とても清潔な感じのする人だ。


もしかして、と思った。


「や……藪内さん……?」


ずっと話に聞いていたその当人らしき人物を前に、わたしはうっかり、名前を口にしてしまった。


「そう、ですが……?」


おじいさん――藪内さんは、目をまたたかせながら、不思議そうに首を傾ける。