思い出したくもない過去に飛んでしまったのは、きっと……。


折り曲げている首の角度を少しだけゆるめ、わたしはチラッと一瞬、右方向を見る。

そこには、ポニーテールに髪を結い上げた、スーツ姿の女の人が立っている。


きっと……この人がそばにいるからだ。ポニーテールを、目にしてしまったから。


美和は入学当初から、長い髪を毎日欠かさずポニーテールにしてきていた。

ポニーテール、イコール美和のトレードマークで。

だからわたしは、いまだにこの髪型を見ただけで、美和のことを思い出してしまうんだ。


朝から美和について考えてしまった日は、本当にダメだ。

ただでさえくすんだ視界がいっそう悪くなって、なにもかもが灰色に見えてくる。


世界から色がなくなってしまう。

……でも。


暗い感情を取り払えないまま入った、一年三組の教室。


「……!」


自分の机の中にあるものを確認した瞬間。

胸にはびこる悪い感情が、シュンと溶けて消えていくのを感じた。


思わず顔をほころばせて、それを手に取る。


青色表紙のノート。元、負の感情吐き出しノート。

そして現在は……昼と夜をまたぐ、交換日記ノートだ。