というかまず、シュートの種類よりもルールを覚えるべきだろうか。

たしかバスケは、ボール持ったまま歩いてはいけなかったはず。ほかには……。


「……はあ」


そうして読み込むこと、三十分以上。

不安を余計に増幅させて、わたしは机に突っ伏していた。


本だけじゃだめだ。たぶん知識として暗記するだけじゃ、実際には動けない。

ネットで映像を見るとかした方がいいのかも……と思ったところで、ふっと視界に影が差した。


「なに読んでるの?」

「~わっ⁉︎」


突然背後からかかった声。肩を跳ね上げて振り返ると、そこに立っていたのは雨夜くんだった。

わたしの大声に、キョトンと目をまたたかせている。


「あ……雨夜くん……!」

「ごめん、驚かせたね。入ってきたとき、一応声かけたんだけど」

「う……ううん!わたしこそ大きな声出して……」


アワアワと、両手を胸の前で振る。

入ってきてくれたことに気づかないほど、追い詰められていたみたいだ。

いつの間に、こんな時間になっていたんだろう。


「あれ? これ、バスケの本?」


申し訳ない思いでいると、雨夜くんの視線が、机に広げられた指南書に向かった。


「永田さん、バスケに興味あったんだ?」

「あ……きょ、興味っていうか……」

「懐かしいな。俺もこういうの持ってた」


雨夜くんのその言葉に、ハッとする。


そうだ。雨夜くんて、中学のときバスケ部だったんだよね。

図書館で偶然会い、公園に連れていってもらった日のことが、脳裏にぶわっとよみがえる。