「まさか。数学は好きなだけだよ」
好きなだけ、なんて。そんなの謙遜だ。
会話に聡明さがにじみ出ているから、頭の良さは前から感じていたけれど、やっぱり本当に賢いんだ。
感心しながら思った。雨夜くん、中学のときはさぞかし成績がよかったんだろうな。
きっと、わたしなんかよりずいぶん、行ける高校の選択肢が広かったんじゃないかな。
県内トップ校とか、すごくイメージぴったり。
なのに、どうして夜間に……?
何度も考えたことのある疑問が、またひっそりと浮かんでくる。
でもこれに関しては、まだ尋ねることができそうにない。
どこまで仲良くなったら、ナイーブな部分に踏み込んでいいものなんだろう。人付き合いをしなかった時期が長すぎて、その加減を忘れてしまったみたいだ。
「それで、今日はどうだった?」
解説し終えたあと。雨夜くんはわたしのすぐ対面の席に座り、そう尋ねてきた。