……それにしても、雨夜くんは本当に綺麗な顔をしているな。

雨夜くんの視線が問題集に注がれているのをいいことに、わたしはチラッと、その横顔を盗み見た。


シャープな輪郭と通った鼻筋。描かれるラインがパーフェクトすぎて、ため息ものだ。


「……っ!」


なんて感心していると、その顔が急にくるりと回って。

正面で見つめ合うかたちになってしまい、わっと息を止めた。


「永田さん」

「えっ、あっ」

「よかったら解説していい?」

「……ええっ⁉︎」


発された言葉を数秒遅れて理解して、驚きの声を上げた。

問題を見始めてから、まだ一分も立っていないのに。そんなバカな、と思いつつコクコクうなずくと、雨夜くんが説明をはじめた。


「これはね――」


そしてまた、驚かされる。雨夜くんの解説は、ものすごくわかりやすかった。

こんがらがった糸が、すうっと綺麗に解かれていくみたい。あんなに悩んでいたのに、一瞬で理解できてしまった。


「あ……雨夜くん……」

「ん?」

「天才なの……?」


呆然としながら、思わずひと言。

一瞬間があったのち、雨夜くんはふはっと吹き出した。