特にこの問四なんて、教科書をいくらめくってもヒントにすら行き当たらなくて。かれこれ十五分は悩んでいた。


「でもこれ、難しくて……」

「どれ?」


わたしのすぐそばに立ち、軽くかがんで問題を見る雨夜くん。

顔と顔の距離は、けっこう近い。

ドキドキはする。けれどわたしの中にはもう、怖いという気持ちは一滴も生まれなかった。


『永田さんは十分……頑張ってるよ』


図書館で偶然会って、救ってもらって。

あの日以降、わたしの中の雨夜くんに対する信頼度は、ますます上昇した。


くわえて毎日図書室で会うことを続けていくうち、こんなわたしでも徐々に耐性がついてきたみたいだ。

雨夜くんとならしっかり目を合わせたり、会話らしい会話をしたりできるようになってきた。


なってきた……と、思う。もちろんまだまだ、挙動不審ではあるけれど。

雨夜くんも、それを察してくれていて。だから今みたいに、近めの距離まで来てくれるようになった。