胸にトクンと、あたたかいものが流れ込む。
一日のうち、わたしがゆいいつ楽しみにしている時間のおとずれだ。
「雨夜くんも、お仕事お疲れさま……!」
「はは、ありがとう。今日は勉強してたの?」
カバンを肩に、こちらに歩いてくる雨夜くん。
ソワソワしながら、わたしはうなずく。
「あ、うん!テスト、近づいてきたから……」
今手元に広げているのは、数学の問題集だ。
先日、中間試験のテスト範囲が発表された。
高校に入ってはじめてのテストだ。赤点なんて取るわけにはいかないけれど、残念ながら勉強は、思うように進んでいない。
とくに数学。もともと中学のときから、数学は苦手だった。
それが高校に上がってからケタ違いに難しくなったものだから、お手上げ状態だ。
基礎問題ならなんとかいけるけれど、応用となると手が止まってしまう。