「川本さんおはよーっ!」

「……っ!」


口を開いたそのタイミングで、後ろからわたしの言いたかった言葉が響いた。

川本さんのもとに、他のクラスメートが走り寄る。川本さんは、「おはようー」と笑顔でそれを迎えた。


「……は」


ため息と共に脱力する。これ以上ない、せっかくのチャンスだったのに。

自分の意気地のなさにがっかりだ。でも……わたしなんて欠陥品だとか、自分を見下すまでの気持ちが胸に巻き起こることはなかった。

また明日、頑張ればいいんだ。次のチャンスは回ってくる。

沈みきることなくこんなふうに立て直して、自分のことを丸ごと嫌わないでいられるようになったのは……。



「永田さん、お疲れさま」


……いつもわたしを肯定してくれる、彼のおかげだ。

その日の放課後。今日も同じくらいの時間に図書室にやって来た雨夜くんは、わたしにやわらかくほほえみかけた。