そのためわたしの結婚相手は、おそらく極道関係者ではないだろう。

裏で金を動かすことの出来る政治家の息子や、信頼のおける殺し屋の可能性もある。はたまた、違法ドラッグをつくるために裏金を用いて製薬会社の社長息子なんて可能性も、ありえなくはない。



……なんて。



「それより、もう休み時間終わっちゃうわよ?

のんびりしてないで、ふたりとも教室にもどりなさい」



頭の痛いことは、今は考えたくない。

余計な思考を途切らせるかのように、口を開く。



「はぁい。またね、レイちゃん」



ひらり。

手を振った芙夏は、あっさりと聞き入れて去っていった。



問題は、まだわたしから離れようとしない雪深だ。

同学年の彼はふたつ隣のクラスだから、チャイムが鳴ってからでもたしかに間に合うのだけれど。




「ねえ、ユキ」



「………」



「ユキ」



「………」



「雪深」



「ん? なぁに、お嬢」



甘えたな声で、恍惚と濡れた瞳で、わたしを見る雪深。

彼はわたしと向き合っているとき、まわりの視線なんて微塵も気にならないんだろう。そうじゃなきゃ人前でこんなにも甘えてこないだろうし。