あと数分で、ほんとに休み時間が終わってしまう。
ごめんねと謝ってお手洗いに向かう途中で雪深に捕まったことを説明すると、芙夏が恨めしそうに雪深をにらんだ。
「ユキちゃんが邪魔なんかするから……!」
「俺悪くないし。
当日の昼休みに勉強聞きに来る芙夏が悪い」
「昨日の夜はお稽古で遅くなっちゃったから仕方ないでしょー!?」
「っていうかスマホ持ってんだから連絡すりゃあいいじゃん。
……まあ、俺といるときにかかってきたら、絶対お嬢が出ない様に仕向けてただろうけど」
拗ねたようにわざとらしく芙夏から視線をそらす雪深。
男の子同士で言い合ってるときは雪深も子どもっぽいなと笑みを深めていれば、「あっ」と反射的に声を漏らした芙夏。
……どうやら。
「その手があった……」
スマホで連絡するという手段が、完全に頭から抜けていたらしい。
それでこそ芙夏よね、と笑ってしまったのが不機嫌さに拍車をかけたのか、雪深がわたしの手を恋人つなぎで絡め取る。
「ばーか。
どっちみちもう間に合わねえんだから、教室もどれよ1年生」
「なっ……、レイちゃん聞いた!?
ユキちゃんって僕に対していつもめちゃめちゃ口悪いよね!?」
「だって俺芙夏のこと嫌いだもん」
「なぁっ……!?」
冷たい雪深の言葉に、わなわなと震える芙夏。
わたしが言う"あの子たち"というのは五人の男子の総称なのだけれど、その中で唯一年下の芙夏。こう言う雪深も、実際は芙夏のことも可愛がってあげてるし。