とことんまっすぐな人間なんて、世界のどこを探してもほんのひと握りしか存在しないと思う。
誰もが素直になれない葛藤を抱えて生きているのだから、それがすこし多いだけで。それでも不器用ながらに生きようとする彼の生き方は好きだ。
「勝手に言っとけ」
「嬢。こんな冷たい男放っといて俺と会話しよ?
シュウといたら、お嬢に悪い影響しかねえもん」
「お前は俺のことなんだと思ってんだ? あ?」
「もう。ふたりとも喧嘩しないの」
言い合うふたりを宥めているうちに、裏門に到着する。胡粋の用事も終わったようで、『今から裏門行くね』とメッセージが届いた。
雪深、芙夏、はとり。中国四国地方を担当する壱方家の息子、柊季。──そして。
「おまたせ、遅くなってごめんね。
彼女じゃなくてもいいからってしつこく言われて、ことわるのに時間かかっちゃった」
中部地方を担当する鯊家の息子、胡粋。
この五人が、御陵五家の跡継ぎだ。"女王の番犬"と呼ばれる、わたしに逆らうことを知らない忠実な子たち。
「無事に返事できた?」
「うん。"護るべき人がいるから、彼女も彼女以下の存在も作りたくない"って言ったらあきらめてくれた。
……最後には、そんなにレイがいいのかって逆ギレされたけど」
女の子って怖いねと彼は笑っているけれど。
普段毒舌な割に女の子に優しい彼は、きっと出来るだけ優しく断ってきたんだろう。逆ギレされたと言ってるけど、それも優しくなだめたんだろうし。
「お前までそういう断り方したら、
またレイが女子から冷たい目で見られんじゃん……」
「なんか言った?雪深。
……そもそもレイが女子から冷たい目で見られんのって雪深のせいでしょ。べたべたしてるし、レイがいるから告白すら受け付けないお前のやり方は女の子をレイの敵に回してるんだよ」
「俺は昔からずっとそうやってんじゃん。
だいすきなご主人様以外の女に興味ねえのは当たり前でしょうに」