ばいばーい、と。"また明日"の意味を込めて一時的な別れの言葉が飛び交う放課後の教室。

わたしには縁のないものだなと自分の日記帳に視線を這わせて数分、廊下から「レイちゃーん」と芙夏の声に呼ばれた。



それを聞いて手帳をバッグにしまうと、待ってくれているみんなの元に駆け寄る。

五家のみんなはわたしの家の敷地内、本邸のすぐ隣にある別邸で暮らしてる。別邸は見た目が和風なものの、中も和風な本邸とは違い、ごく普通の一軒家だ。



現代的な言い方をすれば、彼らはルームシェアしていることになる。

食事は本邸にいる料理人が彼らの分もちゃんと作ってくれるし、一応は不自由のない生活のはず。



「おまたせ。

……あら?胡粋(こいき)はどうしたの?」



「なんか、こいちゃん女の子に呼び出しされたんだってー。

すぐ行くから先にレイちゃん迎えに行ってて、ってさっきメッセージきてたー」



「そうなの。じゃあ、裏門で待ちましょうか」



女の子に呼び出しされたってことは、きっと告白されてるんだろうけど。相変わらずみんなモテる。

全員すごく綺麗な顔をしてるんだものね、とみんなを見回してから裏門へ向かう最中。いつものようにわたしの隣に並んだ雪深が視線を合わせるとふわりと笑った。




「胡粋って、絶対損してる。

俺だったら、お嬢と過ごせる時間の一秒もほかの女に割きたくないもん」



「ユキちゃんの、レイちゃん至上主義ってほんとに一貫してるよねー。

でもユキちゃん告白されたりしてるでしょ?」



「んーん。

俺、告白の呼び出しされる時はいつも『彼女って存在よりも大事な人がいる』って言ってるから、そもそも告白されないもん」



「それは女の子が可哀想だよユキちゃん……!」



叫ぶように告げる芙夏に対し、「事実だし」とそっけない雪深。

そんなふたりのやり取りを見て、くすりと笑ったのは。五家の中で九州沖縄を担当している天祥家の息子であるはとりだ。



「雪深の雨麗(うれい)好きは相変わらずだな」



「そう言うけど、

はりーちゃんだってなかなかだよー?」