ジェイを居間へと引き入れなかったのは私なりの理由がある。
 ロージーが執事や侍女達と同じように彼を見た目だけで判断しないとわかっていても、なんとなくジェイがこの空間に汚されるようで嫌な気がしてしまったのだ。
 その一方で、ロージーに会わせたくないという私の我が儘も混在しながら。

 執事の後をついて玄関ホールへ向かうと、そこに彼はいない。

「ジェイはどこ?」

「庭で待って頂いております」

「どうして中でお待ち頂かないの?」

「シモンズ家は貴族階級の家格です。 失礼ながら彼は無作法ではないにしても、平民のような身なりをしておいでです」

「それは失礼だわ。 彼は思いやりと親切心を忘れない心優しき立派な紳士よ」

「さようですか。 あの方とリリィ様はお似合いでいらっしゃるから」

「貴方という人は……」

 この執事はこんなにも冷えた感情の持ち主だっただろうか。
 不覚にも腹が立った。 人への判断材料を見た目のみとするなんて。

「もういいわ。 ジェイの要件は私が窺います」

 彼は庭の花壇の前で、腰を屈めながら花の匂いを嗅いでいる。
 今の季節はあまり種類が少ないから眺めても楽しくないかもしれないというのに。

「ジェイ、こんにちは」

「やぁ、リリィ嬢。 少し見ない間に庭の花壇が整備されていて気持ち良いね。 きっと君のおかげだね」