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『リリィお姉様、本当によろしいのですか?』
『えぇ、構わないわ。 こんなに長いと持て余してしまうもの』
それはまるで何かの儀式のようで、覚悟のいる決断でもあった。
女の髪は命だ、キラキラと輝く揺れる長い髪は誰もが憧れる。 だから切るだなんて考える女は滅多にいない。
それでも私にはこの長い髪が、無用の長物のように思えたのだ。
鏡台の前に座った私の髪を優しい手触りで撫でながら、ロージーは残念そうに言った。
『お姉様の真っ直ぐな髪、とても好んでいましたのに』
『私は貴方の癖毛も好きなのよ』
ロージーが私の後方に立ち、自ら鋏を手にして一束を挟んだ。
その手は震えて、グッと表情が固くなる。
『ロージー、いいのよ。 髪はすぐに長くなるわ』
片手に髪の束、片手に鋏。
髪を切るというのはこんなにも尊い気持ちになるのだろうか。
軽くなった髪と、ロージーの手にした髪の束が切り離されたのだと知った瞬間、目から涙が溢れた。
まるでこれまでの時間がそこにあるようで、とてつもなく悲しくなったのだ。
『お姉様……』
ロージーも、そしてロナウドも肩までの短い私の髪を褒めてくれる。
活動的だ、昔のリリィが戻って来たようだ、と。
それでもやはりロージーの、お人形のような雰囲気を羨ましく思える。
私にはない、それが彼女に備わっている事に。
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