今後あと二、三年もすればロナウドは学校を卒業して戻って来るはず。
 その時に私達は、晴れて婚約者から夫婦へと形を変えるのだ。
 それまで寂しくはあっても、私も立派に花嫁修業をして男爵夫人となる努力をするつもりだ。

「もうじき、ロナウドとは離れ離れになるのね」

「三年なんてあっという間だよ」

 この男爵家の庭から門を出て裏手へ回ると、その少し先に広がる深い森。
 そこから時々、馬の嘶きが聞こえて来る。

「リリィ、馬に乗って森を散歩しないか?」

 私もロナウドも馬に乗るのが好きだ。
 もちろん彼の助けがなければ乗る事はできなくて、私を乗せて手綱を握るロナウドの息遣いがドキドキして心臓の音が早くなる。
 きっとこれが初恋というものなのだろう。

「リリィ、落とされないように俺がついているからね」

「ロナウドは手綱さばきが上手いもの。 安心していられるわ」

 早足ではない、リズミカルな速度で森へと近づいて行く。

 子供の頃ならきっと、ロージーが追い掛けても追いつかず、泣いている場面。

 そんな遠い昔を思い出していると、ロナウドが速度を上げて早足で駆け出した。