「リリィ様、またですか。 貴方様は婚約者のいる御令嬢ですよ。 なのに、どこの馬の骨ともわからない卑しい男にわざわざ会いに行くなんて正気とは思えません」

「ロナウドには話してあるわ。 彼の友人ですもの、身分はしっかりしているはずよ」

「そうかもしれませんが、万が一の場合は私が叱られてしまいます」

 侍女の言葉が刺々しいのは私を心配だからだとわかっている。 それでもどこかジェイへの侮蔑を感じるのはどうしてだろうか。

 やはりジェイの薄汚れた見た目が原因なのかもしれないが、人間性は確かなものだと私には思えるのだ。

「遅くならないように帰って来るわ」

 侍女からお茶菓子のスコーンを受け取り、外へと出て行く。

 片手の籠とは反対の手に日傘、手には白い手袋。 今日は日差しが強そうだ。