ロナウドにはジェイに会った経緯も邸へと招待された経緯も話してある。 特に反対も怒られもしなかった。

『ジェイはなかなかに謎の多い男でね、年配の貴族連中や使用人には煙たがられているよ。 本人はあの性格だから気にする素振りも見せないがね』

 ジェイの住む邸は仮住まいで、産まれ育った隣国の家がどのような規模なのかわからないが、別邸と呼ぶにはあまりに粗末な佇まいだ。 まるで放浪者のような雰囲気の彼にお似合いと言えばお似合いの。
 ただ、貴族のマナーや習慣をどうでもいい事のように話すわりに、まるで立ち居振舞いが粗末な邸に似合わない。

 本当に不思議な人物だ。

 ジェイの邸へは森を抜けて行くだけなのだから散歩ついで。 お洒落する必要も馬車を出す必要もない。 私でも歩いて行ける距離だ。

 ビアンカがもう少し成長すれば何か食べられるおやつでも持参するところだが、まだ歯も生えていない赤ちゃんには早い。
 そこで、ビアンカのお転婆ぶりを眺めながらジェイと食べるおやつを準備する事にした。