「痛ッ!」

 その際に手をついてしまったらしい。 手首に衝撃があったのだ。

「リリィお嬢様!」

 やっと部屋に姿を現した使用人達は、床に倒れている私を見て大きな声を上げた。

「どうなさったのですか?」

「ごめんなさい。 お茶のお代わりが欲しくて……」

 使用人が手を貸すが、私の手首の痛みには気づかない。

「お茶が必要なら私達を呼んで下さいませ。 その為におりますのに」

「そうですよ。 怪我をなさったら私共が叱られてしまいます」

 その怪我をしてしまったのだ、とは言えなかった。
 それでなくても手間を取らせてばかりなのだ。 言えるはずもない。

 寝台に戻ってお茶を飲んでいると、客人が帰った後らしく、ロージーが顔を出した。

「リリィお姉様、どうなさったのですか?」

「ロージー、お客様は?」

「お帰りになりましたわ。 その後でお姉様の事を聞いて」

「早く元気にならないといけないわね。 でないと貴方にも心配掛けてばかりだわ」

「そんな風におっしゃらないで下さい、お姉様」

 ロージーは昔から優しくて可愛い子。 それは今も変わらず、寧ろ綺麗な女性に成長したのが印象的だ。