医師の診察では長年のそれは昏睡状態にあり、このままの可能性もあったという。 その為、奇跡的な目覚めは研究の余地があるらしい。
 そして私の身体が極度の体力低下で、すぐに起き上がる事はできないと言われ、時間を掛けてゆっくりと回復させていくべきだとの助言を受けた。

 医師の診察が終わり、部屋には三人だけ。 女中がお母様とロージーのお茶を用意すると、それを飲みながらロージーが言った。

「お母様、私にお姉様のお世話をさせて下さい。 本来なら男爵家でお姉様を診るべきところを私が我が儘言ったのですから。 お姉様の側にいたい、と」

「ですが、ロージー。 貴方は……」

 お母様が戸惑いながらロージーを見る。

「大丈夫ですわ、お母様。 大好きなお姉様がやっとお目覚めになられたのですもの。 こんなに嬉しい事はないわ」

「いいのね、ロージー?」

「えぇ。 お姉様が少しでもお元気になられたら、きっとロナウド様も安心でしょうし」

「そうね、リリィは貴方の大切な姉だわ。 そして私の可愛い娘よ」

「お姉様も、でしょ?」

「リリィを失わずにすんで本当に良かった」

 お母様の目から涙がこぼれる。

 それは安堵と戸惑いのどちらにも思えて、この三年が長かったのかどうかなんて私には理解できるはずもなかった。