その悲しみは邸内において、思わぬ歪みを引き起こし始めた。
 ジェイやリリィに対する後悔から邸を去る使用人、隣国の王太子を足蹴にしなければ或いは自分が……と立場の展開を考えた者、その複雑な感情が空気をさらに悪くしていったのだ。

 辞める者、新入りに厳しく接する者、取り仕切る執事の苛立ち、そんな人間達に対して悩みが尽きる事はなかった。

 ジェイはもしかしたらこの状況を見越していたのかもしれない。 そして彼はそういう世界で次期国王として戦っているのだろう。