「リリィ、美味しいかい?」

「えぇ、とても。 やはりあのパン屋さんは最高だわ」

「わかるがね、今度はちゃんと警備をつけるんだよ?」

「もしかして、女官がまた怒ってた?」

「いや、呆れていたよ。 王太子妃殿下はお転婆が過ぎるとね」

「だって城下には興味がいっぱいあるのだもの」

 ジェイと婚約して半年後、私達は盛大な式を上げた。
 ここに来て一年以上が経とうとしている。 あっという間だ。

「ねぇ、本当に美味しいのよ?」

「あぁ、リリィのその顔を見ればね。 今度から城に届けさせよう」

「嬉しいわ。 また別のお忍びを探す楽しみができるから」

「困った妃殿下だ。 とにかくあまり侍女を心配させてはいけないよ」

 連れて来た彼女とは別の侍女は心配性の性格で、実は彼女の姉なのだ。

 姉妹揃って私の侍女をしてくれるのはありがたいが、昔からの侍女の方が妹のはずなのに、まるでその姉のように振る舞う事があっておもしろい。