彼に恋してから、約5年。
結局、この想いを手放せないまま、時間だけが過ぎて。
もう、諦めることを諦めた。

彼に、彼女が出来るまでは。

心の中で想っているのくらい、構わないよね。
そう思い切って、報われない片想いを楽しむことにした。




だから、ここ1ヶ月くらい増えている残業は、正直ご褒美だ。
元々、営業成績の良い彼の仕事は多いのだけど、今、必要?と思う資料作成や、急ぎでない提出書類をよく作らされる。

でも、ほんの少しでも、彼と二人で居られるのだ。
こっそり喜ぶくらい、許して欲しい。

その分、仕事は完璧に仕上げますとも‼︎





今日も、そんな感じで残業をしていた。
昔の紙の資料を、パソコンで閲覧できるよう入力を頼まれたのだ。

さっき抗議をしてから、すぐ仕事を再開させたけど、彼も自分のデスクで資料を纏めているようだ。
私が済ませないと、彼も帰れない。急ごう。




スピードを上げて入力して、もうすぐ終了と思った時、背後から彼の素敵ヴォイスがした。
だから、背後はやめてってば。


「村井さん、ちょっと聞いていい?
そのまま仕事しながらでいいから」

珍しく、ちょっと切羽詰まった声。

振り向こうとすると、両肩を押さえられた!

一気に顔が熱くなる。
ボディタッチは、アラサーの枯れ女に刺激が強すぎる‼︎

すぐ離してくれるかと思いきや、そのまま暫く沈黙して。
彼は、囁くように弱い声で、言った。


「1ヶ月くらい前、男と居たでしょ。
ーーーー彼氏?」