「あ…え(っと)…ま(って)」

混乱した私は、言葉にならない音を呟く。
彼が?本当に?


私の沈黙を迷いと取ったのか、彼は更に言葉を紡いだ。

「俺、たくさん村井さんに助けられたり救われたりしたんだ。毎日が楽しいのも、仕事頑張れるのも、全部村井さんのお陰なんだ。

俺…村井さんが居ないと、ダメになる。
村井さんが必要なんだ。
だから、お願いだから、うんって言って?」


ぎゅうぎゅう抱きしめる腕は、絶対離さないって言ってるよう。
背中で感じる熱と、少し震える腕は、色んな覚悟を感じさせて。



ーーー色々うだうだ考えている私は、きっと逃げているだけだと気がついた。



彼に釣り合うのか。
女の子たちの、嫉妬や嫌がらせ。
歳上であること。
他にも沢山あるコンプレックス。



そんなものは、彼の覚悟に対して、同じ天秤に乗せるのすら失礼な気がした。




がんばれ、がんばれ、私。
勇気を振り絞って、私は声を出した。