町を歩くと周りの人達が振り返って顔を向ける。頬を赤らめたり、ポカンと口を開けたままだったり人それぞれだけど。
決して、私を見ている訳ではない。
皆が視線を向けているのは、私のすぐ隣を歩く萌花だ。
今日は2人で春物の買い物に来ていた。
萌花はお気に入りらしいベージュの背中にリボンがついたコートを羽織っている。サイズアウトしたら、私が貰う予定だけど。
大きな瞳に、綺麗にカールされたバサバサの睫毛。誰が見てもとびきりの美少女。でも、私だって、今日は頑張ってお化粧やお洒落してきたんだけどな。ぷぅと頬を膨らませる。
「可愛いね!一緒にさ、そこの新しくできたカフェでお話しようよ」
男の人2人連れのナンパにあえば、
「ごめんねー、今日はこの子とデートなの!」
萌花はパチンと右目を閉じて、私を後ろからギュッと抱きしめた。
ふふっ、と笑う声がすぐ耳元で聞こえて、完全にこの状況に慣れているのが分かる。
分かってはいるけど、私は完全におまけだ。