「ねぇ、芽生ちゃんってイブくんと付き合ってるの?」
「え?」
仕事中に声をかけてきたのは、中でもバイト歴の長い望ちゃん。
お店の入り口まで迎えにきているから、イブの存在は知っていても不思議は無いのだけど。名前まで知ってるんだ、と疑問が沸き上がる。
「いや……、多分そうかのかな」
「へー」
「え、望ちゃんはイブの事何で知ってるんですか?」
「だって、一緒に働いてるじゃない」
「……!?」
望ちゃんが私に、猫みたいに鋭くて大きい瞳を向けた。
「イブくんとキスした?」
「へ?」
「気持ちいよね、ふわふわした唇で」
「え」
「あーあー、イブくんも彼女持ちかぁ。残念!」
望ちゃんが微笑んだところで鈴の音が鳴り響いて、ホールへと出ていってしまった。
え、どういう事ーー?