1週間前、友達が彼氏に振られた。
ひどく落ち込む紗央を元気付けようと、あかりと3人でカラオケでクリスマスオールする予定だったのに。
「ごめん、どうしてもバイトヘルプ来て欲しいって。本当にごめん!!」
まず、あかりがバイト先の店長に呼ばれてしまう。
「2人で楽しむから大丈夫だよ」
なんて快く送り出した後、なんと紗央サオの彼氏(元の筈)からのスマホの着信が入った。
「芽生めい、どうしよう。今から会いたいだって」
「……うん、早く行きなよ!私は大丈夫!!」
「ごめんね!ありがとう」
瞳に涙を溜めながら紗央がカラオケBOXを後にする。「どうしよう」なんて言っちゃってる時点で答えはもう決まってんじゃん。
短くて掠れた笑いは音にもならない。
安っぽい赤い皮のソファ。ガラスのローテーブルの上に広がる甘いお菓子と、アルコールは飲めないから炭酸ジュースが3人分並んでいる。部屋にはたった1人だけど。
強がった分だけ、心のダメージは大きかったりする。
あかりのお姉ちゃんの免許証まで使って、オールで予約した部屋。取り残されるなんて、寂し過ぎるクリスマスイブ。
さっきまで盛り上がってた一緒に歌おうなんて言ってた曲のイントロが、虚しくも流れ出した。