帰りのホームルームが終わると同時に、あかりが鞄を手に席を立つ。
「私、バイトあるから!」
と言って、教室の中を走って担任の先生より先に出て行った。まさに勤労女子高校生。
「あかり、バイト忙しそうだねぇ」
「ね、またヘルプだって」
紗央の言葉に同意。冬休み入ってから毎日だもん。
あかりの場合は自分のお小遣いのためというより、頼まれたら断れない系なのだろう。
「芽生は今日、面接だっけ?」
「うん。駅前のカフェ屋さん!」
そう。今日は初めてのバイトの面接の日。
もちろん、まだ採用されるか分からないけど。
「そっかー、2人ともバイトで遊んで貰えなくなっちゃうかー」
紗央が不満げに唇を尖らせる。
「いやいや、まだ決まってないし。それに、紗央は誠先輩いるじゃん」
そのせいで、寂しい思いしたんだ。なんて言葉は飲み込んだ。
「えーー、芽生は?彼氏とか作んないの?」
「まぁ、とりあえずは。それに……」
「それに?」
「それに、いい出会いもあるかもしれないしね」
冬休みは1人家で過ごす事が多かった。別にそれでも良かったのだけど。
単なるお小遣い稼ぎだけじゃなくて、退屈な毎日に刺激をいれてみたい理由も確かにあった。