先生が寝ている方を見てみると、予想通り先生と目が合った。









しかし予想に反して先生は優しい笑顔で「おはよう」と言ってきた。






なぜ予想に反してかというと、私の記憶上の先生は、基本無表情だったからだ。しかし顔が恐ろしく整っているため、その無表情も色気があってそれはそれは女子生徒のファンが大勢いた。






先生が優しい笑顔を披露している姿は、覚えている限り、ない。






そんな先生が私に優しくおはようと言ってきたのだ。





思わずドキッとした私を誰も責めないでほしい。






しかし状況が状況なだけに、私も先生のように優しい笑顔で挨拶することなどできなかった。






「お、おはようございます…」






絵に書いたような情けない顔と声で挨拶を返した。






「何、菜乃花お前、朝から俺の事誘ってんの?」






「ん…?」







言っている意味がわからず数秒思考をめぐらしたあと、自分が裸でベッドに座っていることに気がついた。






「ぎゃーーーーー!!!見ないで!!!」







我に返った私は可愛い女の子。とは真反対の奇声を上げながら必死に毛布を被った。







「なんだよ。朝から大声出すなって…いいじゃん。もう昨日さんざん見たし。」







涼しい顔でそう言ってのける先生は見覚えのある無表情に戻っていた。





って、そんなことはどうでもいいのだ。






肝心なことを聞く必要がある。






「あの、先生。昨日って、私たち何がありましたかね…?」






恐る恐る聞いてみると、先生は意外そうな顔をして、そのあと面白がるような意地の悪い笑みを披露して見せた。






「あぁ、そういう。お前覚えてないのか。ふーん。昨日あんなに気持ち良さそうに喘いでたのに。」







「……!?!?」







顔だけでなく耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかった。






「せ、先生なのにそういうこと言わないでください!私元生徒ですよ!?」







「だからなんだよ?今では立派な社会人だろ?」









「でも私の中では先生は先生だし、先生も私のことは生徒のはずです!」








「昨日二次会行くまではそうだったけど、その後の菜乃花見てたらとても生徒とは思えなくなったぞ?」






「な…!?」







昨日の私ってなに!?なんかやらかしてる!?





必死に昨日の自分を思い出そうとするも、何も出てこない。





思い出せるのは昨日は普通に高校の頃の思い出話をしていたことくらいだ。







「私、何をしましたか…」







そう聞くと、何か考える素振りをしたあと








「それは自分で思い出しな?」






また意地悪な笑顔でそう言うのだった。