「・・・!」
「これだけずっと言いたかったの。ごめんね、死んじゃって」
宏海さんは分かっていたのだろう。彼女が先生のことを好きだったように、先生も自分のことが好きだということを。
「僕も・・・僕もずっと宏海のことが好きだった!」
先生もきっと後悔していたのだ。
もし「好き」とこの一言をもっと早く言っていれば、もしかしたら事故に遭う事はなかったのかもしれない。少しでも未来が変わっていたかもしれない。
隣に彼女がいる日常を送っていたかもしれない、と。
「ごめん、ごめん、ごめん」
先生は私の身体を包み込む様に強く抱きしめ返す。涙を流す先生に宏海さんは目を細めて笑みを浮かべる。
そしてゆっくりとお互いの顔が見えるように距離を開けた。
「貴方まで泣かないで。最後に笑ったサクくんを目に焼き付けて消えたい」
「消えないでくれ、お願いだから・・・」
「ごめんね、もう行かなきゃいけないの」
「宏海・・・!」
手を伸ばす先生からすり抜けるようにして一歩後ろに下がる。
目尻に溜まった涙を指で払った。