そんな風に心の中で文句を言っていると、「それにしても」と彼女に話しかけられる。

「すっごい綺麗な部屋だね、ここ」

「そうですか?」

ぐるりと部屋を見渡してみる。

勉強机に椅子、寝台にクローゼット、ローテーブルにテレビ。

八畳ほどの洋室に、様々な家具が並んでいる。

フローリングには緑のカーペットが敷かれ、窓から差し込んだ陽光がその上に落ちていた。

彼女とお家デート、ということで部屋は念入りに掃除した。断捨離もして、物は少し減っているけれど。

別に、特別綺麗なようには見えない。

良くも悪くも普通、だと思う。

「うん、綺麗だよ? 私の弟の部屋なんか、泥棒でも入りましたか、っていうレベルだもん」

「そ、そうなんですね……」

……どんな部屋なんだ。

そう思いながら、俺は座布団を二つ出して、ローテーブルの前に置いた。

「どうぞ」

「ありがと。……鞄、ここに置いてもいい?」

「いいですよ」

先輩が荷物を整理して、落ち着いたのを見て、俺は話し出す。


「――さあ、先輩。今日はバレンタインのお返しをする日です。何をしてみたいですか?」