密かな思いを抱きつつ、通っていた部活は楽しかった。

新たな友達も出来たし、思っていたより、やりがいも感じていた。

だから、高望みはしない。……そう思っていた。

忘れもしない――あれは、季節が一つ移り変わり、セミの鳴き声が体育館に響くようになったある夏のこと。

『森下くん、今日の放課後予定ある? ちょっと時間もらいたいんだけど』

部活が終わった後、そう言われて二人で帰った日。

先輩と二人で帰れるなんて、今日はツイてる。そんな淡い幸せは、すぐぶち壊された。

『森下くん……、好きです。私と、付き合ってくれませんか?』

特大の爆弾発言。

淡い幸せが、即死級の濃度を持ったなにかに早変わりする。

身長差のせいで、上目遣いになった先輩の顔が、今も目に焼き付いて離れない。

――あの日から、俺と先輩の関係は『後輩とマネージャー』から、『彼氏と彼女』に変わった。