普段なら、絶対しないであろう行為。

先輩に嫌われたくなくて、封印してきた気持ちが暴かれる。

「……杏里」

後ろから、彼女に抱きつく。

覆いかぶさるように、でも壊れ物を扱うかのように優しく。ギュッと腕の中に収まる彼女を潰さないように抱きしめる。

そうしながら、耳元でそっと名前を囁けば、彼女がビクリと震えた。

「……っ」

その動きによって我に返り、衝動で抱きしめてしまったことに気付く。

でも、この温もりを逃したくない。そんな思いが勝り、体は動かない。

「……あの。急にこんなことをして、すみません、せんぱ――」