どれくらい時間が経っただろう。

五分? 十分? もしかしたらもっと短いかもしれないし、長いかもしれない。

いつの間にかPHSのコールは鳴らなくなっていた。



(死ぬ、のかな……)



手足が冷たい。

血が止まらない。

自分の作った血溜まりに身を浸し、時々目を開けてはひたすら白い壁をぼんやり見つめるしかできない。


(たぶん……死ぬだろうな……)



雛子は、以前にも死にかけたことがあった。


普段は意図的に意識の底に閉まっている、けれど決して忘れることはできない、暗い記憶。