時計の秒針の音だけが、白い壁に囲まれた狭い病室内に響く。
「ヨウちゃん……」
ベッドに横たわったまま、河西清乃は小さな声で彼の名前を呼ぶ。
『これは世直しなんだ……必要なことなんだよ、僕達の灯火を繋げるには……』
「ヨウちゃん……」
彼があの朗らかな声で返事をしてくれることは、もうない。彼はもう、楽園へと旅立ってしまったからだ。
「……」
河西はゆっくりと、ベッドから身体を起こす。そっと足を曲げて、伸ばして、動きを確かめる。
怪我は随分良くなり、歩くのには申し分ない。
今こうしている間にも、警察はバス横転事故の原因を調査していることだろう。
「……急がないと、足が着く」
彼がバスに施した細工は、きっともう見抜かれている。彼が、そして自分が、その犯人だと気付かれるのは時間の問題だろう。
河西はおもむろに床頭台に備え付けてあった簡素な金庫を開け、中からあるものを取り出す。
そして目を閉じ、黒くて冷たい金属の感触を指先で丹念に確かめる。
『灯火を灯せよ……そして────』
「魔火を、落とせよ……」
やがて彼女はゆっくりと目を開け、部屋の扉を見つめた。
その瞳に、強い覚悟を宿して────。
「ヨウちゃん……」
ベッドに横たわったまま、河西清乃は小さな声で彼の名前を呼ぶ。
『これは世直しなんだ……必要なことなんだよ、僕達の灯火を繋げるには……』
「ヨウちゃん……」
彼があの朗らかな声で返事をしてくれることは、もうない。彼はもう、楽園へと旅立ってしまったからだ。
「……」
河西はゆっくりと、ベッドから身体を起こす。そっと足を曲げて、伸ばして、動きを確かめる。
怪我は随分良くなり、歩くのには申し分ない。
今こうしている間にも、警察はバス横転事故の原因を調査していることだろう。
「……急がないと、足が着く」
彼がバスに施した細工は、きっともう見抜かれている。彼が、そして自分が、その犯人だと気付かれるのは時間の問題だろう。
河西はおもむろに床頭台に備え付けてあった簡素な金庫を開け、中からあるものを取り出す。
そして目を閉じ、黒くて冷たい金属の感触を指先で丹念に確かめる。
『灯火を灯せよ……そして────』
「魔火を、落とせよ……」
やがて彼女はゆっくりと目を開け、部屋の扉を見つめた。
その瞳に、強い覚悟を宿して────。