The previous night of the world revolution6~T.D.~

「何ですか」

「…あ、いえ…。やっぱり…何でもないです」

何でもないですって言う奴の、およそ八割は、何かある奴だからな。

これ、人生の教訓だから覚えとけ。

「何ですか気持ち悪い。言ってくださいよ」

「で、でも…」

「敵同士とはいえ、今は一時的でも同じ屋根の下、一緒にスパイやってる仲なんですから、ある程度腹を割るくらいじゃないと、ストレス溜まりますよ」

俺は、非常に温厚で平和主義な大人だからな。

気に食わないこと言われたからって、すぐキレたりしないよ。

「…えっと。何て言うか…。ちょっと、俺のことも一応心配してくれてるんだな、と思って…」

「…心配?」

「あ…いや、やっぱり忘れてください」

今しがた言われたことを、そんな簡単に忘れる訳ないだろ。

心配…心配か。

してるのか?俺。ルーシッドのことなんて。

…心配してるって言うか…。

もしもルーシッドが、『ルティス帝国を考える会』でたった一人の異端者としてハブられ、孤立し、果ては陰口まで叩かれるようになったなら…。

それを見たらきっと、俺は思い出したくないことを思い出す。

そうしたらきっと…不愉快という言葉では言い表せない、負の感情を抱くことになるだろう。

無意識にそう思ったから、ルーシッドを労るような言葉が出てきたのだ。

「…別に心配なんてしちゃいませんが、ヘマだけはしないよう気をつけてくださいよ」

「は、はい」

ルルシー。あなたの言ったことは、多分正しい。

俺の中では、例え10年以上のときが経とうとも。

未だに心の隅っこで、あの学校でルシファーだったときのことを、引き摺っているのだ。

…ところで。

ルーシッドが王制賛成派を演じるということは。

対する俺は、王制反対派を演じるということになる。

ひいては、『ルティス帝国を考える会』の方針に従い、共産主義者になる必要がある。 

少なくとも、口先だけは共産主義的意見を口にし続けなければならない訳だ。

それは納得しているし、そういう役割だと理解している。

で、俺の本心はどうなのか、という点だが。

実を言うと俺は、本心はルーシッドと同じ考えなのだ。

つまり、王制賛成派の資本主義者って訳。 

帝国騎士団の存在も容認している。

意外に思ったか?

勿論、これは客観的に見たときの感想だ。

俺は確かに帝国騎士団なんか嫌いだし、女王…と言うか、ローゼリアなんか、糞食らえと思ってるが。

それは、俺にそう思わせるだけのことを奴らがしたから。

つまり、俺の個人的な感情の問題だ。

帝国騎士団と、元女王ローゼリアを巡る、あの忌々しい事件さえなければ。

俺は帝国騎士団にも女王にも、憎しみを抱いたりはしなかった。

あくまで、俺は個人的な理由から、奴らを嫌悪しているだけで。

個人的な私怨を抜きにして考えれば、俺は王制も貴族制も、帝国騎士団の存在も、ルティス帝国には必要だと思っている。

まぁ、貴族として生まれ、洗脳じみた帝王学を叩き込まれたから、その影響が残ってるだけなのかもしれないが。

それに、俺は衣食住に困ったことがないから、余計に。

だが、それらを差し引いたとしても、やはりこの国の現体制は、間違っていないと思う。

何故か?

理由は単純だ。

実際、ルティス帝国が建国されてから、今日に至るまで。

この制度でやってきて、ルティス帝国は現在、世界から先進国として認定されている。

あの洗脳国家シェルドニアにも引けを取らない、大国として名を馳せている。

その実績がある。

俺達が今こうして、ルティス帝国で生きているのが、その証だ。

確かに、未だにルティス帝国には、貧民街と呼ばれる場所はある。

帝都は華やかなものだが、地方では、アイズやアリューシャが育ったような、貧困の巣窟もある。

確かに、そういう場所で育った人々にとっては、女王なんて、貴族共なんて糞食らえ、と思ってるかもしれないが。

それでも、ルティス帝国の大部分の人間は、現制度である程度安定した生活を送っている。

ルティス帝国の土地と人口を考えれば、これだけの人間を飢えさせずに生かし、先進国として維持している事実は、認めざるを得ないだろう。

そして、そんなルティス帝国の現在の基盤を作ったのは。

他ならぬ、『考える会』の連中が嫌悪している、王制とそれを取り巻く貴族達、そして帝国騎士団だ。

彼らが、この国を守ってきた。守り、育て、今に至るまで他国に占領されることなく、ルティス帝国という国を維持している。

一つの国を、それも、これほどの大国を守り、維持していくことに、一体どれだけの労力が必要だと思う?

俺もまた、それらの惜しみない「労力」によって淘汰された人間の一人だ。

説得力が違うだろう?

オルタンスが俺にしたことは、今でも許せない。決して。

生涯何があったとしても、俺はあいつを許さないし、帝国騎士団も、ローゼリア元女王のことも許さない。

だが。

その一方で、オルタンスが何も、俺を憎んでいたからあんなことをしたのではない、ということは、理解している。
言いたくはないし、認めたくはない。

だが、帝国騎士団長としてのオルタンスは、そういう決断を下さなければならなかったのだろう。

多数決の原理、ってのがあるだろう?

世の中、そういうものなんだよ。

どうしても、大多数の人間に従わなければならない。

自分はBが良いと思っても、他の大勢がAの方が良いと主張するなら、Bを望む人々も、渋々Aを選ばなければならない。それで納得しなければならない。

それが社会ってもんだ。

もっと残酷な例えをするならば。

10人が乗っている船と、1000人が乗っている船が、同時に難波したとして。

救助に行けるのは、どちらか片方だとしたら。

さて、あなたなら、どちらを助ける?

どちらも見捨てるか?それは責任を放棄した、偽善者のやることだな。

責任のある者なら、苦渋の選択で、10人を見捨てるだろう?

10人の犠牲で1000人が救われるなら、そちらを選ぶだろう。

それが、世の中の摂理なのだ。

そして俺は、犠牲にされた10人のうちの一人なのだ。

ルティス帝国という大きな国を守る為、生贄に捧げられたのだ。

オルタンスもそう。

1000人を救う為に、俺を犠牲にした。

まぁ、これはあくまで例えであって、実際に俺の犠牲によって、何人救われたのか。

誰が救われたのかは知らないし、そんなことはどうでも良い。

でも、俺の言いたいことは伝わっただろう。

十人十色、という言葉があるが。

人は、一人一人、それぞれの主義主張がある。

何を正義と定義し、何を悪とするかは、その人の判断基準次第。

その判断基準は、人によって違う。

時には、天と地ほど違う場合もある。

実際俺にとっての正義は、恐らく他の大多数の人間にとっては、悪なのだろうし。

世の中には人によって違う正義があり、それでも国を一つにまとめる為に、「大多数の人間が考える正義」を、国が提供している。

それがルティス帝国の王制であり、帝国騎士団制度だ。

彼らを象徴として、国を一つにまとめている。

しかし、一つの意見を提示すれば、必ず賛同する者と、反対する者がいる。

大勢の人が賛成したとしても、反対する者は、少人数でも、必ずいる。

それが、さっきの例えだな。

Aの方が良いって皆思ってるみたいだから、国としてはAを選択するが。

中にはBの方が良いと思っている、少人数の反対派もいる。

そして、あの『ルティス帝国を考える会』のサークル。

あのサークルに所属するメンバーは、Bの集団なのだ。

国がAを選択したから、仕方なくAに従ってはいるけど。

本当はBの方が良いと思っているから、少人数でも手を取り合って、自分達の主張するBを議論の場にあげてもらおうと、必死に抵抗している。

サークルメンバーには悪いが、俺は、大多数のA派だ。

つまり、現体制に賛成派だ。

それでいて、スパイ活動の為に、反対派を演じなければならない。

そういう意味では、元々現体制賛成派で、自分の主張に嘘をつかなくて良いルーシッドの方が、スパイとしては楽なのかも。

ルーシッドは、そのまま自分の思ってることを言えば良いんだからな。

対する俺は、本当は現体制で良いと思ってるのに、わざとサークルの指針に従って、現体制に反対しなければならない。

うーん、難しい。

この論文を読んで、彼らの主義主張は分かったから、適当にそれに合わせるつもりだが。

折角、ルーシッドと二手に分かれたのだ。

ここは日和らず、エリアスくらいには、主張をハッキリさせておいた方が良いだろう。

明日からの自分の言動を考えながら、俺はそう思った。
…ともあれ。

俺は、計画通り『ルティス帝国を考える会』に入会した。

あとは、野となれ山となれだ。
――――――そして、翌日から。





本格的に、ルティス帝国総合大学での、講義が始まった。
さて、いよいよ始まった、大学の講義。

実は大学の講義なんて、人生で初めてなので。

どんな感じなのかな〜、と思っていたら。

何のことはない。

帝国騎士官学校で習った範囲を、復習させられているようなもの。

一番最初に受けた、一時間目の講義は、『論文作成法A』という授業。

成程、やはり大学だから、論文の書き方を学んでおくんだろうと思ったが。

ただの、作文の授業だった。

もっと分かりやすく言うと、国語の授業みたいなもん。

それも、帝国騎士官学校だったら、一時限50分で済ませられるような内容を。

何故か、わざわざ90分というアホみたいに長い時間をかけて、延々ダラダラ喋るだけ。

初回だったからということもあって、学生は何もやらされることなく、ただレジュメを配られて、それを眺めてるだけ。

教師も教師で…いや、教師じゃなくて教授か。

教授の方も、自分で用意してきた、恐らく毎年使い回しのスライドショーを、ポチポチ流しては、そこに書かれることを読んでるだけ。

お前要る?

レジュメに書いてあることしか喋らないんじゃ、レジュメだけで良いじゃん。教授要らねぇ。

でもまぁ、この科目の教授が、特別やる気のない教授だったというだけかもしれない。

俺は自分の研究をやりたいんだ、新入生共の相手なんてしてられねぇよ、と思ってるのかもしれない。

で、気を取り直して二限目。

次の講義は、教室を変えて『外国語基礎Ⅰ』。

あれ?俺、教育学部に入学したんだよね?

何で、中高と似たような授業やってんの?

いや待て。外国語と言っても、幅は広い。

もしかしたら、俺が知らない、世界各国の少数民族が使う言葉を習うのかも…と。

内心、ちょっと期待していたら。

見事に裏切られた。

全然そんなことはなかった。

中高を通して普通に授業を受けているはずの、オーソドックスでスタンダードな外国語…アシスファルト語…及び。

選択科目として、シェルドニア語の授業も受けられますよ、とのこと。

それだけ。

既にマスターしている外国語を習うことが、どれだけ苦痛だったことか。

そういや、ルーシッドは外国語学部に入学したんだっけ。

あいつ、何語勉強してるんだろう。

折角大学来たんだから、まだ知らない言語を学びたいよな。

そして、先程の教授もそうだったけど。

この外国語の教授もそう。

猿でも分かりそうなことを、延々とダラダラ説明しているだけ。

教え方も、「お前本当に、ルティス帝国最難関の大学の教授か?」と疑うほど。

俺に講義やらせた方が、余程分かりやすいと思うぞ。

ランドエルスのときも、同じこと思ったな。

とにかく一日の授業、全部そんな感じだった。
三時限目は歴史の講義で、これまたいちいち説明されなくても、普通に教育を受けてたら、常識的に知っているようなことのおさらい。

つーか、受験科目に歴史あったじゃん。学生達、受験時に散々歴史勉強してるじゃん。

入学してからも、まだやらせんの?

お次は、期待を込めて四時限目。

今度は着替えて、体育館に集合した。

体育館はここ一つだけではなくて、複数あるらしい。

無駄に設備が豪華だな。

で、体育館で何をするんだろう、「学校の先生を目指す学生なる者、体力と筋力を鍛えておけ!」と。

延々、走り込みとか腕立て伏せとか腹筋でもさせられるのかな、なんて。

帝国騎士官学校時代の、「体育の授業」を思い出していたら。

これまた、全然そんなことはなかった。

大学指定のダッサいジャージに着替えさせられ、体育館に集められ。

開口一番、体育を受け持つ教授に言われたことは。

「貴様ら走れ!」でも、「動きが鈍い!」でもなく。

「今日はバレーボールをしましょう!」だった。

俺、バレーボールする為に大学入ったんじゃないんだけど。

しかし、不思議なことに異論を唱える者は一人もおらず。

ここで俺が教授に口を挟んだら、俺が悪目立ちすると思い、仕方なく黙っていた。

そして、バレーボールをやらされた。

何が楽しくて。

俺はスポーツは好きだが、チームスポーツは嫌いなんだが?

しかも、チームの中にトロ臭いのがいて、そいつのせいで負けたしさ。

これだから、チームスポーツは嫌いだよ。

下手くそな奴が混ざってると、そいつが足を引っ張る。

…それで?

今のところ、全然教育学部っぽい講義、受けてないんだけど。

俺、何しにここに入学してきたんだっけ?

午前中の授業が終わったとき、俺はそう思った。
「ふー、やっと終わったな」

バレーボールを終えて、体育館から帰りながら、エリアスが話しかけてきて。

そして、ようやく思い出した。

そうだ。俺学校の先生になりに来たんじゃないんだった。

スパイしに来たんだった。

危ねー。危うく忘れるところだったよ。

「昼、どうする?弁当?」

「あ、いえ」

大学の敷地内で営業されている、コンビニかパン屋で買おうかなと。

すると、エリアスがこう提案してきた。

「だったら、一緒に学食行こうぜ」

学食。

成程、そういうものがあるのか。

大学の定番だな。

帝国騎士官学校時代も、学校側が提供してくれる食事を食べていたけれど。

あれは学食と言うより給食で、それ以外に食事出来る場所も、選択肢もなかった。

全寮制の挙げ句、休日でさえ許可なく外出は禁じられていたからな。

食事制限による体格作りも、あの学校の目的の一つだったから、仕方ないと言えば仕方ないが。

その点、大学は良い。

家から弁当を持ってきても良いし、構内にあるコンビニやパン屋で買っても良いし。

エリアスが言ったように、学食に言っても良いし。

何なら大学の外に出て、近所にある喫茶店やファミレスに入って、ランチをしてきても良い。

昼食の選択肢が実にフリーダムで、そこは良いところだと思う。

それに。

同じサークルで、同じ学部の仲間同士。

食事によって親交を深められるなら、悪くない。

更に、エリアスは。

「他にも何人か誘ったんだよ。良いだろ?」

「えぇ、良いですよ」

どうやら彼は、身近にいる人間なら、大抵誰でも声をかけるタイプらしいな。

友達作るのが上手いタイプ。

そんなエリアスを、最初に友人に出来たのは、スパイとしては上々。

エリアスを通して、横の繋がりが広がる訳だからな。

ましてや、食事時に、テーブルにつく人間が増えれば増えるほど。

少しでも、多くの情報を耳にすることが出来る。

これは僥倖。

やっぱり、俺の普段の行いかな。

内心ほくそ笑みながら、俺はエリアスとその仲間達についていった。

彼らも同じ学部の人間で、お互いに自己紹介をした。

いちいち名前を覚えるのが面倒臭いので、まぁ仮名としてABCとでも言っておこう。

本日一緒に昼食を摂るメンバーは、ABC三人と、俺とエリアス、この五人。

最初の情報収集としては、充分の出来。

そして。

いざ、辿り着いた学食では。

「おぉ…広いなぁ」

まず最初に、Aが感嘆の声をあげた。

俺も、同じ感想を抱いた。

どうしても俺は、比較対象が帝国騎士官学校のそれになってしまうのだが。

あの腐れ学校の食堂の、軽く三倍は広い建物だった。
しかも。

そんな広くて、たくさんのテーブルと椅子が所狭しと並べられているのに。

その中のほとんどのテーブルは、既に学生達で埋まっていた。

凄いな。大繁盛じゃん。

まぁ、この大学の規模を考えれば、驚くほどのことではないのかもしれないが。

「俺とルナニアで食券買ってくるよ。お前ら、空いてる席確保しておいてくれるか」

「了解」

エリアスがそう言い、ABCも賛同して、空いている席を探しに行った。

こんなに広かったら、お互いはぐれると迷子になりそうだが。

大丈夫なんだろうか。

それにしても。

「食券システムなんですね」

言うまでもなく、帝国騎士官学校では、食事のメニューに選択肢などなかった。

さすがに大学の学食はもう少しメニュー豊富で、多分三種類くらいはあるんだろうと思っていたが。

セットA、セットB、セットCみたいに。

カウンターでどのセットにするか、口頭で伝えるだけで良いのかと思ったら。

食券制度なんだ。

まぁ、これだけ人が多かったら、いちいちカウンターで金銭のやり取りしてる暇はないか。

「そ。ルナニア何にする?」

「何があるんですか?」

本日の日替わりランチとか?

「色々あるよ。唐揚げ定食、ハンバーグ定食、焼き鮭定食、ミックスフライ定食…」

え、そんなにあるの?

「あとは、うどんやラーメンなんかの麺類と…丼モノも種類多かったな。カツ丼親子丼天丼…」

「そんなに種類があるんですか?」

凄いな。

たかが学生共に、そんなに豊富なメニュー選ばせるとは。贅沢な。

「そりゃあ、ルティス帝国総合大学ともなれば、そこらの高校の学食とは訳が違うよ」

「…へぇ…」

「俺の高校の学食なんて、メニュー三種類しかなかったんだぜ?日替わりランチと、うどんと、カレー。これだけ。毎日三択しかなかったから、本当辛かったよ」

高校に学食があった時点で、選択肢少なくて辛い、なんて言葉を使うことが許せないのだが?

学食あるだけ幸せじゃないか。

俺なんて、食べたくても食べたくなくても、毎日決められた食事しか与えられなかったぞ。

まぁ、ルルシーに会うまでは、食欲なくてほとんど残してたけど。

「ルナニアの高校はどうだった?」

「…そもそも学生食堂がありませんでしたよ」

「えっ」

…そんなに驚かれることなの?

こればかりは、地域差があるとしか言えないが。

少なくとも、天下の帝国騎士官学校には、そんなものなかったよ。

そんな自由は。

「じゃ、毎日弁当?」

「まぁ…そんな感じです」

弁当でもないけどね。全寮制だから。

「そりゃ、つまんなかっただろうなぁ。せめて大学の学食で、好きな物食べろよ」

「そうしますよ…」

何と言うか。

格差社会を感じるね。

…それにしても。

「詳しいですね、エリアス」

「何が?」

「今日初日なのに、学食のメニューを把握してるなんて…」

余程学食が楽しみだったのか?そんなことはないと思うが。

「いや、オープンキャンパスで来たとき、学食使わせてもらったことがあるんだよ。オープンキャンパスに来た生徒だけ、特別に使わせてもらえてさ」

成程、そんな制度が。

それは知らなかった。

「ルナニアは、ここのオープンキャンパス来なかったのか?」

「…」

…不味い。

さすがに、オープンキャンパスのことまで聞かれるとは思ってなかった。