The previous night of the world revolution6~T.D.~

何もしていないってどういう意味か、と言うと。

本当に、何もしてない。

やがて、開発チームのメンバーが揃い、今日も少しでも『光の灯台』完成の為に、研究会議を行っているときも。

自称博士は、ただ見ているだけ。

と言うか。

口を挟みたくても、自分はよく分からないから、口を挟めないだけなのかもしれない。

でも博士としての地位は失いたくないから、会議そのものには参加して。

さも、自分も開発チームの一員ですみたいな顔をしている。

横っ面ぶん殴ってやろうか。

しかも、その研究会議だって。

研究会議と言えば聞こえは良いが、その中身はと言うと。

「どうだった?図書館の調査は」

「はい。音楽療法に関する本を、何冊か借りてきました」

「こちらは、世界のハーブに関する事典を探してきました」

ルリシヤの問いかけに、二人のメンバーが、意気揚々と答えた。

もう、この時点で笑止。

だってこいつら、「図書館で本借りてきました(ドヤッ)」だからな?

幼稚園児でも出来るわ。

図書館で本を借りるのは良いけど、その本を熟読して、必要な情報をまとめて資料にしてきました、とか。

せめて、本の内容を要約してレポートにしてきました、とか。

それくらいの努力を見せろよ。

しかも、ハーブって。

本家のテナイ・バールレンが泣いてるぞ。

ちなみに、「ハーブについて調べたらどうだろう」と提案したのは、他でもない俺だ。

『白亜の塔』とハーブに、何の関係もないことは知っている。

しかし、ハーブって、ハーブティーやアロマオイルに使われているだろう?

ハーブの中には、リラックス効果や催眠効果があるとされているものもある。

それを、『光の灯台』で再現出来ないか、という試みである。

提案したのは自分だが、内心大爆笑過ぎて腹わたが捩れそう。

んな訳ねーだろ、と。

音楽療法についてもそう。

世の中にそういう治療法が存在しており、一定の効果があることは認めるが。

それに、音楽による洗脳については、『ホワイト・ドリーム号』で体験させられたが。

あれは、あくまで『白亜の塔』の補助的機能しかなかった。

つまり、洗脳ミュージックだけで、完全に人を洗脳することは不可能という訳だ。

実際俺も、あの洗脳ミュージックは、聴かされても「なんか変な音楽だなぁ」程度の効果しかなかった。

あれにプラスして『白亜の塔』が働いていたから、気持ち悪くなっただけで。

あの音楽そのものに、人を洗脳する効果はない。

その効果を、『光の灯台』に…『白亜の塔』に応用するなど、検討違いも甚だしい。

アプローチとしては悪くないのかもしれないが、『白亜の塔』のからくりを知っている俺達としては、失笑モノである。

ハーブだの音楽だの、しかもそれについての本を借りてきた…程度で喜んでいる俺達では。

『白亜の塔』の再現、『光の灯台』の完成など、夢のまた夢だ。