「おはようございます、エリアス…。じゃなくて、同志エリアス」
「あぁ、良いよ良いよ。『帝国の光』の中ではともかく、普段のときは普通に呼び合おう。俺達は同志である前に、友達なんだから」
友達(笑)。
まぁ、思い込むのは勝手だよな。
「じゃあ、エリアスと呼ばせてください」
「うん、そうしてくれ。俺もルナニアって呼ぶから」
好きにしてくれ。
いずれにしても、偽名なんだからさ。
「ルナニアも、これから『帝国の光』の本部に行くんだろ?」
「そうですよ。エリアスもですか?」
「あぁ。俺もそうなんだ」
そうですか。
「全く、夢みたいだよなぁ」
…?
お前の頭の中が?
「こうして、あの『帝国の光』の一員になれて…しかも、同志ヒイラに信用された、『裏党』の党員になれて」
はぁ。
そんな、目をキラキラさせて言うことか?
「『帝国の光』専用の社宅にまで住まわせてもらえるなんて。こんな名誉、他にないよな」
…。
…ルティス帝国総合大学の学生、っていう肩書の方が、世間的には遥かに立派だと思うけど。
お前とは価値観が合わないな。最初からだけど。
あんな監視付きボロアパートに住まわされて、あれが名誉だって。
「確かに、誇らしいですよね。『裏党』の党員だって、社宅に住まわせてもらえる党員は、ごく少数だそうですし」
「そうだよ。本当に名誉なことだよなぁ」
「…でも、エリアス。ちょっと気になることがあるんですけど」
別に、他意がある訳ではない。
単なる鎌掛けだ。
「気になること?」
「えぇ。何だかあの部屋って…誰かに見られてる気がしません?」
「えっ」
俺が声をひそめて言うと、エリアスは驚いたような顔をした。
「常に何処からか視線を感じると言うか…。特に水場とか…」
別に、水場だけ監視が強い訳じゃない。
ただ、エリアスをビビらせてやろうと思っただけだ。
水場って言うと…アレだろう?
そういうモノが出てくる定番だろ?
「な、何だよ…。まさか事故物件だって言うのか?確かに古い建物だけど…」
「いや、そこまでは言ってませんが…。なんか気持ち悪いときがあって…」
「や、やめろよ…。きっと気のせいだって」
「…そうだと良いんですけど…」
若干、ビビった様子のエリアス。
ふっ、ざまぁ。
お前、『帝国の光』なんていう、怪しげなオカルト集団に入り浸ってる癖に。
幽霊にはビビるのかよ。
『帝国の光』の方が、俺にとってはよっぽど恐ろしいが。
「そ、それよりさ」
エリアスが、強引に話題を変えてきた。
『帝国の光』の『裏党』党員ともあろう者が、幽霊にビビるな。
死神でさえ恐れをなして逃げていく、俺を見習え。
「ルナニアは、『帝国の光』で何やってるんだ?あんまり姿を見掛けないけど」
「…あぁ…」
そうですね。
俺、基本的にずっと地下にいるから、上にいるエリアス達と顔を合わせる機会がない。
でも、まさか「武器庫の奥にある秘密の研究室で、『光の灯台』っていうチートアイテム造ってるんだよねー(笑)」とも言えず。
そんなこと言ったら、ヒイラ大激怒だろうなぁ。
それはそれで面白そうだが、今はまだそのときではない。
ので。
「講演会の企画委員に選ばれたので、各地を転々としてるんですよ」
「へぇ、そうなのか」
勿論嘘だが、これは俺が考えた嘘ではない。
仕事内容について、他の党員に聞かれたときは、そう答えるように、と。
開発チームの全員に、そんな指示が出ている。
無論、ヒイラからの指示だ。
『光の灯台』について、徹底的に秘密にしておきたいらしい。
更に。
「エリアスの方は、何を?」
仕事内容についての話題が出たときは、即座に話題を変える。
これも、ヒイラからの指示だ。
「俺は、ひたすら集金係だよ」
と、苦笑いで答えるエリアス。
お前、まだ札束数えてたのか。
同じルティス帝国総合大学の学生なのに、この差よ。
ルリシヤからの推薦がなかったら、俺も今頃、陰鬱な顔して、一日中札束数えてたんだろうなぁ。
あ、それとも。
「各地を回って、募金を募ってるんですか?」
『ルティス帝国を考える会』にしょっちゅう来ていた、あの派遣員みたいなことをしてるのだろうか。
それならまだ、部屋に引きこもって札束を数えるだけ、という苦行からは開放される。
が。
「いや、俺は本部で数える係」
残念でした。
一日中万札の数ばかり数えていたら、頭おかしくなるだろうなぁ。
まぁ、万札だけじゃなくて、小銭もあるんだろうけど。
それが自分の金なら、夢の札束風呂という妄想に浸れるだろうに。
自分の金じゃない上に、その使い道は粗悪品の武器と、紛い物の研究に注ぎ込まれてるんだからなぁ。
やってられないだろうよ。
「大変ですね」
心から同情するよ。
札束だって、結局、紙切れの束に過ぎない訳だからな。
その紙切れに価値が付与されるから、大事なものになるだけで。
自分が使う訳でもない札束なんて、ただの紙切れだ。
一日中、ただの紙切れの枚数を数える。
想像しただけで嫌になる。
つーか、『光の灯台』を造るほどの技術があるなら、自動で金を勘定出来る機会くらい導入しろよ。
何で、そこだけアナログなんだよ。
さぞやエリアスもうんざりしているだろうと思って、労ってみたが。
しかし、エリアスの頭は、相変わらずお花畑なので。
「そんなことないよ。これもルティス帝国の未来の為に、必要な仕事なんだから」
あ、駄目だ。
完全にこいつ、頭がヒイラ脳に侵されてる。
「それに、お金の管理を任されるなんて、同志ヒイラ総統に信頼されてる証だ。そう思うと、全然大変じゃないよ」
残念でした。
お前、まだ全然信頼されてないよ。
「ルティス帝国の未来の為に、お互い頑張ろうな、ルナニア」
「えぇ。頑張りましょうね」
君の頭が、相変わらずお花畑で。
むしろ、俺は安心したよ。
さて。
エリアスと共に、『帝国の光』本部ビルに到着。
俺達はそこで別れ、エリアスは上に、俺は下に向かった。
いつもの、俺の仕事場。
地下研究室。
「おはようございます」
中に入ると、まるで御神体のように、「それ」が鎮座していた。
言わずもがな、『光の灯台』である。
とはいえ、まだこれは完全な『光の灯台』ではない。
試作一号機のこれはまだ、白く塗られた単なるクズ鉄の塊でしかない。
ルナニア・ファーシュバルの任務は、このクズ鉄を、完全な『光の灯台』にすること。
ルレイア・ティシェリーの任務は、このクズ鉄を、絶対に完成させないこと。
この対立する二つの任務を、同時にこなさなければならないのだから。
案外、札束数えてる方が楽なのかもしれないな。
すると。
「あぁ、君か。おはよう」
「おはようございます、博士」
白いクズ鉄の後ろから、サシャ・バールレン…もとい、
薄ら若ハゲ反抗期家出症候群のなんちゃって博士が、ひょっこりと顔を覗かせた。
全ての元凶なんだってな、お前。
ルルシーに聞いたよ。
ルナニアの任務が終わったら、お前ボコボコにする予定だから、宜しく。
まずは、その脳天に僅かに残った髪を、芝刈り機で焼け野原にするところから始めるとしよう。
今から楽しみだよ。
こんな奴を、博士と呼ばなければならないのが非常に遺憾。
実際、この男は、博士と呼ばれていながら、何もしていないのだ。
何もしていないってどういう意味か、と言うと。
本当に、何もしてない。
やがて、開発チームのメンバーが揃い、今日も少しでも『光の灯台』完成の為に、研究会議を行っているときも。
自称博士は、ただ見ているだけ。
と言うか。
口を挟みたくても、自分はよく分からないから、口を挟めないだけなのかもしれない。
でも博士としての地位は失いたくないから、会議そのものには参加して。
さも、自分も開発チームの一員ですみたいな顔をしている。
横っ面ぶん殴ってやろうか。
しかも、その研究会議だって。
研究会議と言えば聞こえは良いが、その中身はと言うと。
「どうだった?図書館の調査は」
「はい。音楽療法に関する本を、何冊か借りてきました」
「こちらは、世界のハーブに関する事典を探してきました」
ルリシヤの問いかけに、二人のメンバーが、意気揚々と答えた。
もう、この時点で笑止。
だってこいつら、「図書館で本借りてきました(ドヤッ)」だからな?
幼稚園児でも出来るわ。
図書館で本を借りるのは良いけど、その本を熟読して、必要な情報をまとめて資料にしてきました、とか。
せめて、本の内容を要約してレポートにしてきました、とか。
それくらいの努力を見せろよ。
しかも、ハーブって。
本家のテナイ・バールレンが泣いてるぞ。
ちなみに、「ハーブについて調べたらどうだろう」と提案したのは、他でもない俺だ。
『白亜の塔』とハーブに、何の関係もないことは知っている。
しかし、ハーブって、ハーブティーやアロマオイルに使われているだろう?
ハーブの中には、リラックス効果や催眠効果があるとされているものもある。
それを、『光の灯台』で再現出来ないか、という試みである。
提案したのは自分だが、内心大爆笑過ぎて腹わたが捩れそう。
んな訳ねーだろ、と。
音楽療法についてもそう。
世の中にそういう治療法が存在しており、一定の効果があることは認めるが。
それに、音楽による洗脳については、『ホワイト・ドリーム号』で体験させられたが。
あれは、あくまで『白亜の塔』の補助的機能しかなかった。
つまり、洗脳ミュージックだけで、完全に人を洗脳することは不可能という訳だ。
実際俺も、あの洗脳ミュージックは、聴かされても「なんか変な音楽だなぁ」程度の効果しかなかった。
あれにプラスして『白亜の塔』が働いていたから、気持ち悪くなっただけで。
あの音楽そのものに、人を洗脳する効果はない。
その効果を、『光の灯台』に…『白亜の塔』に応用するなど、検討違いも甚だしい。
アプローチとしては悪くないのかもしれないが、『白亜の塔』のからくりを知っている俺達としては、失笑モノである。
ハーブだの音楽だの、しかもそれについての本を借りてきた…程度で喜んでいる俺達では。
『白亜の塔』の再現、『光の灯台』の完成など、夢のまた夢だ。
つくづく、サシャ博士(笑)が馬鹿で助かった。
この男が馬鹿じゃなかったら、話はもっとややこしくなっていただろう。
俺とルリシヤでは、『光の灯台』の完成を止められなかったかもしれない。
この男が、『白亜の塔』に関するルーツを知る家系であることを自覚し、『白亜の塔』の設計図を持ち出し。
本気で、ルティス帝国で『白亜の塔』の再現を目論み、その為の人員と設備を整えていたなら。
今頃、マジでルティス帝国は、洗脳大国シェルドニア王国を再現していたことだろう。
あー、考えるだけで恐ろしい。
でも、このお馬鹿博士は、『白亜の塔』について勉強することを怠り、放蕩三昧で、おまけに反抗期と来た。
ほぼノープランで家出をして、兄へのちょっとした反抗心のつもりで、家宝まで持ち出して外国に逃げた。
そして、あわよくばルティス帝国で天下でも取ろうとしたのか、それとも興味本位だったのか。
自分の持つ『白亜の塔』に関する資料に、飛びついてくれたヒイラの存在が嬉しかったのか。
要するに、自分の持ってる自慢の「玩具」を、羨ましがってくれる人がいたので。
ちょっと良い気になって、博士気取りで研究を始めたのは良いものの。
ここに来て自分の不勉強が祟って、折角持ち出してきた開発資料も、あまり役に立たず。
博士を名乗ってる癖して、実は誰よりもこの研究についてよく分かっていないので。
ただ白衣を着て椅子にふんぞり返り、開発チームのメンバーが右往左往する様を見ながら、椅子で尻を温めているだけ。
滑稽極まりない。
まぁ、前述の通り、こいつがちゃんと『白亜の塔』に勉強していたなら、非常に厄介なことになっていたはずなので、馬鹿博士で助かったのだが。
とはいえ。
本当に『白亜の塔』について理解し、バールレン家の一員としての自覚があるのなら。
反抗期を起こすことも、家出することも、大事な開発資料を持ち出すことも。
その資料を用いて、ルティス帝国で一旗揚げようなどという馬鹿なことも、考えなかっただろうけど。
本当に賢い人間なら、そうなるよ。
でもこの馬鹿は、やらずにはいられなかったんだろうな。
自分が持ち出してきた設計図の一部を、完成させずにはいられなくなった。
何せ、おだててくれる人がいるんだもんな。
自国であるシェルドニアにいれば、自分は大したことのない、不勉強で不真面目な馬鹿貴族の次男としか見られないが。
そんな馬鹿貴族の次男でも、ルティス帝国に来れば、何だか凄く偉い人のように扱ってくれる。
そりゃあ気分も良いだろうよ。
おめでたい頭の人間が多くて、呆れ果てて物が言えないな。
だが。
会議の場では、積極的に意見を出さなければ、他のメンバー達からの信用度が下がる。
従って俺は、馬鹿な発言を延々と繰り返す。
「そうですね。それじゃまずは、その音楽療法に関する本を読んで、『光の灯台』に応用出来そうな箇所をリストアップしてみましょうか」
とんでもなく無駄な作業である。
だが、時間稼ぎには有効だ。
「分かりました。その作業は…同志ルナニア、あなたに頼めますか?」
おい。
音楽療法に関する本を借りてきたと言う女性党員が、俺にその本を手渡してきた。
お前が借りてきたのに、読んでレポート作成するのは、俺の仕事なのかよ。
まぁ、無理もない。
彼女は、ルリシヤが選んだなんちゃって精鋭開発チームの一員。
研究員に選ばられたにも関わらず、研究職なんて全く経験がない…どころか。
大した学歴を持つ訳でもなく、このような分厚い本は、読むだけでも精一杯なのだろう。
ましてや、その中から『光の灯台』に使えそうな文献を探し当てるのは、至難の業。
とてもじゃないけど自分には出来ない、と自覚してるんだろう。
だからこそ、本を借りてきただけで、それを読むことはしなかったのだろうし。
「なんかそれっぽい本見つけたから、持っていって読んでもらおう」とでも思ったんだろう。
浅はか。
自分で読め、自分で。
しかし。
「分かりました。任せてください」
仮にもルティス帝国総合大学の学生が、「そんな難しいこと出来ません」とは言えないので。
頼まれれば、引き受けざるを得ない。
実際、俺にとっては大した作業でもないしな。
それに、下手に他の奴の手に渡って、研究がおかしな方向に歪んでいったら困る。
あくまで、この研究の主導を握るのは、俺とルリシヤでなくてはならないのだから。
「頼めるか。済まないな、同志ルナニア」
その辺りの事情も熟知しているルリシヤが、俺にそう言った。
「いえいえ、お安い御用です」
「時間は、どれくらいかかりそうだ?」
おっ。
さすがルリシヤ、良い質問ですね。
時間稼ぎには最適の質問だ。
「そうですね…。一週間あれば、何とか出来ると思います」
嘘である。
こんなもの、一晩徹夜したら余裕。
しかし、敢えて時間を長めに申告しておくことで、少しでも時間を稼ごうという腹である。
とはいえ、一週間はちょっと長過ぎたか?
…と、思ったが。
「さすが、ルティス帝国総合大学の学生さんですね。こんな分厚い本を、一週間でまとめられるなんて…」
「頼りになります。同志ルナニア」
褒められた。
何これ嫌味?嫌味なのか?
いや、普通に羨望の眼差しで見られてるから、純粋に尊敬されてるんだろうけど。
お前ら本くらい読めよ。
「ハーブ事典の方は、どうしましょうか?」
あぁ。そんなもの借りてきたって言ってたな。
事典は、文章だけの本と違って、写真も載ってる図説本なので、比較的読みやすいだろう。
だが。
「これも、結構大変な作業ですよね。1ページずつ、ハーブの種類や効能を確認して…」
「時間がかかりそうですね」
お前らマジで、小学校からやり直せば?
ならば、ここは更に俺の株を上げさせてもらおう。
「それも、俺がやりましょうか?」
俺はお前達と違って、ちゃんと義務教育受けてきたから。
事典くらい読めるわ。
「え、でも…。同志ルナニアにばかり任せるのは、悪いですよ」
とか言いながら。
その、「じゃあやってもらえますかね」みたいな期待に満ちた顔、やめろ。
厚かましいなお前。自分も開発チームのメンバーだろ。
少しは役に立とうという気概を見せろ。
すると、他のメンバーが。
「同志ルナニアにだけ任せるのは申し訳ない。ここは、皆で調査するとしよう」
と、ここに来て初めて、まともな提案が出た。
「そうですね。皆でやった方が、色んな意見が聞けるでしょう」
「どうですか?同志ルニキス」
「そうだな。時間はかかると思うが、これも必要な作業だ。見落としがないよう、じっくり目を通そう」
ルリシヤも、時間稼ぎに乗り気。
じゃあ、ここはルリシヤの意見に従うとするかな。
ルリシヤは、ここの開発チームのリーダー的存在だからな。
そして。
「同志サシャ博士、あなたもそれで良いですか?」
「うん、そうだな。じっくり調べよう」
お馬鹿博士は、真剣な顔で頷いたが。
本当は何も分かってないはずなので、俺は内心大爆笑。
お前、本家の『白亜の塔』見てきた癖に。
あの機械にハーブの効能が使われているなんて、本気で思ってるんだろうか。
本当に何も分かってないんだな。
バールレン家の名が泣くぞ。
こうして。
俺達はその日一日。
テーブルの上にハーブ事典を置いて、皆でそれを取り囲み。
それぞれメモ用紙と筆記用具を片手に、いかにも神妙な顔をして、事典を1ページずつ読み耽ることになった。
この、地味で退屈な時間よ。
苦行でしかないので、早く終わってくれないかな。
だってこいつら、「ハイビスカスに洗脳効果があるかもしれない…」なんて、真面目な顔で思案してるんだよ?
ねーよ。
そもそも、ハイビスカスがハーブとして使えることを初めて知りました。
結構健康に良いらしい。
へぇ。初めて知った知識だ。
帰ったら、ハイビスカスティーでも飲もうか。
でも、『光の灯台』の役には、立ちそうにないな。
と、まぁ終始こんな調子なので。
まぁまぁ分厚いこのハーブ事典を、全員で読み終わるまでに、一体どれだけ時間がかかることか。
今日一日じゃ、まず無理だな。
良い感じの時間稼ぎにはなりそうだ。
ついでに、無駄にハーブに詳しくなりそう。
唯一懸念な点は、この長い作業にうんざりした誰かが、
「ねぇ、この作業って本当に意味があるの?」という真理に気づくことだが。
全員真剣な顔でページを見つめているので、今のところその心配はなさそうだ。
ルリシヤ以外、馬鹿ばっかで助かった。
…すると。
「邪魔するよ、同志達」
「…!同志ヒイラ!」
ハーブ事典と睨めっこしていた、俺達のもとに。
この研究のスポンサーである、ヒイラ・ディートハットが訪ねてきた。
こうして、不意に訪れるから嫌いだよ、こいつは。