The previous night of the world revolution6~T.D.~

…ちなみに。

今の「は?」は、素だった。

帝国騎士団?俺が?

スパイなのは確かだが、帝国騎士に間違われるとは。

俺のこの正義の仮面が、うっかり帝国騎士のように見えたのだろうが。

それは誤解だな。

「何のことだ?」

「大丈夫だ、しらばっくれなくても分かってるから」

「…」

何故かは知らないが。

俺は、スパイバレしているのだろうか。

いや、これは違う。

ここで狼狽えるのは、三流スパイのやることだ。

俺はスパイ検定特1級のカリスマスパイなので、そんなことでは動じない。

これは、単なる鎌掛けだ。

ヒイラは、俺の一挙一動を、つぶさに観察していた。

俺が狼狽えるのではないか、動揺するのではないかと。

大体、本当に俺がスパイだと知っているのなら。

俺が帝国騎士団のスパイなのか、と聞くはずがない。

俺は、まかり間違っても、帝国騎士団の人間ではないのだから。

まぁ、あのまま人生が狂わなければ、今頃帝国騎士になっていたかもしれないが。

そんな世界線はない。

「…どうやら俺は、酷い誤解をされているか…。あるいは、ちっとも信頼されていないらしいな」

「…」

だから俺は、少しも狼狽えなかった。

ただ淡々と、そして憮然として答えた。

「非常に遺憾…そして不快だ。俺は貴族のことはもとより、帝国騎士団にも、少ならからぬ憎しみを抱いている。それなのに、スパイを疑われるとは」

「…」

相変わらず、黙って俺の観察を続けるヒイラ。

「同志を疑っているのか。それとも、俺にそんな、つまらない鎌掛けをしなければならない理由でもあるのか?」

だから俺はあくまで、自分の忠誠心を疑われて、不機嫌になっている様を演じる。

実際、マフィアの身でありながら、帝国騎士と間違われるのは、さすがに不快だぞ。

ルレイア先輩だったら、発狂モノだったろうな。

すると。

「…さすが、俺の見込んだ通り…君は、頭の良い奴だな」

…あん?