そこには、沈黙がだけ漂っていた。

 もうずっと誰も立ち入っていない。自然の聖域。




 ―どうしてここだと思ったんだ。

 奏汰はギリッと奥歯を噛み締めた。鼻の奥にツーンと響き、目尻が熱くなる。悔しさと虚しさに覆いつぶされそうになる。


 ただ呆然と立ちつくした。

 ―何もわからない。

 ―もしかしたら思い違いで奏絵は家に居るかもしれない。

 はかない希望に託すことにした。
 本当はこれっぽっちも信じられない希望だったけど。

 元来た道へ踵を返した、その時、
 カツン―と、足に何か硬いものがあたった。硬いといっても石の部類ではない。人工的な何か…。

 ―カナ。

 見てはいないが、奏絵のモノの何かだと直感が働いた。
 しゃがみこみ、それを手に取り見つめる。


「カナの携帯。」