抱え上げたままの体勢で事を終え
「流石に腰にきた」
 と先輩は笑った。

「変態、」
私が口を尖らすと、首を傾げ、Tシャツの衿元を引っ張り、私の着けたキスマークを見せつけた。
「どっちが」
と意地悪い笑みを浮かべた。


壁と先輩の間からにじり抜け、背を向けてパパッと服を着た。
「怒ったの?」と覗き混んできたから、反対に顔を向け、みないようにした。
「うそ…ごめんね。オレが言いました。許して…」
なんて後ろから抱きしめ、耳元で囁くから、うっかり許しそうになった。でも、ちゃっかり、回された片手が胸を触っていることに気づき、ギューっとつねり、
「懲りないですね」
 と睨みつけた。
「だって、羽澄ちゃんのDカップのおっぱい好き」
「へんたい!! 」

 先輩の頭を叩いて、その場に放置し、玄関へドカドカドカと向かい、パンプスに足を入れた。

「ちぇっ」といいながら、先輩もすぐに追いつき靴を履き、ドアを開けた。


 約1日ぶりの外の空気は、清々しかった。




 鍵を掛けたままにしてた私の自転車は、先輩が立てかけたままになっていた。
「良かったー」
と先輩は自転車を引っ張って通りに下ろし、サドルに跨がり、荷台をポンポンと叩いて言った。

「さ、姫。乗ってください。ご自宅までお連れしますよ。」

細い先輩が私を乗せてこげるのか、疑問だったけど

「じゃ遠慮なく」
と横向き腰掛け、先輩の腰に手を回した。
「しっかり掴まっててね」
はっきり言って、めちゃくちゃ力いっぱいペダルをこぐから、少し笑ってしまった。


昨日待ち合わせたコンビニまでくると、どちらに向かうのか聞かれた。
次の角を右に曲がって、その次を左に行ったら、あとはまっすぐと伝える。

重くて申し訳ないなって思って、降りようか尋ねたが、大丈夫と首を振られ、そのまますわったままでいることにした。


 コンビニから2分も自転車をこぐと、私のアパートに到着した。
自転車を降りた先輩は汗だくにだった。

先輩のマンションとは違い、私と同世代のこのアパートはどこか黒ずんでるし、「ここが家」と伝えるのが少し恥ずかしかった。