眩しさを覚えて、羽澄は目を覚ました。
 右横にあるカーテンの隙間から、鋭い朝の光が差し込んでいた。

 身体を起こした。
 
 ―あれここどこ?

 目をこすり、見覚えのない部屋を見回した。……見覚えがあるようにも思うのだが、頭がガンガン痛くて、回転が鈍い。

 スースーと、左側から人の寝息が聞こえてきた。
 恐る恐る音の方向に目をやると、腰までタオルケットを掛けた、半裸の男が腕を枕にして眠っている。
 横顔に頬まで髪が掛かり、顔が分からないけれど、誰だかはわかっていた。

 それからゆっくり自分の身体を見下ろす。

 やっぱり、何も着ていない。

「あああああああ。またやってしまった!!」
 男を起こさないように小さく叫んで、膝を抱えた。

 羽澄は大学に入ってからこの状態は2回目。
 前は、明日香に連れられた合コンに行った時だった。目が覚めたら、それこそラブホテルのベットの上、背を向けて熟睡していた男を放置して、部屋から飛び出て始発で帰ったのは、記憶に新しいゴールデンウィーク明けの頃。
 その日、明日香に大学で聞いたら
「微妙に話の合った、結構イケてた彼と、一緒に帰ったよ。」
 らしい。明日香に事の顛末を言ったら
「別に処女でもないし、痛いオトナの経験したと思って自重したら?」
 と軽やかにたしなめられた。
 
 めちゃめちゃ自己嫌悪して、もうお酒はやめようって誓ったのに、1ヵ月半でこれって…ありえない。

 確かに処女ではなかった。
 高1の終わりから友達の紹介で付き合い始めた彼氏と、高2の夏休みに1度だけそういうことになった。学校違ったしなんとなく自然消滅したけれど。

 ―もう最悪だ。

 ―前回と違って相手が分かってるだけマシか?

 ―そんなわけないし!!!

「あああああああ、もう!!」
 さっきより少し大きな声で呻いた。

「ねえ、おはよう。」
 急に声を掛けられ、ちょっと飛び上がって振り返った。