暗い部屋にうずくまり、一人で頭を抱えて泣いた。
 いい年した男がこんなのって気持ち悪ぃって、頭の片隅で冷静な塊だけのオレが笑ってんのに、涙が止まらない。

『ソウ、ねえ聞いてる?将来なんて決まってないんだよ。別にこの家にいるのが全てじゃないって考えたこと無い?』

 急に、カナの声が聞こえた。

 ―考えてる!そんなの知ってるよ!!

 ―でも年老いてきたばあちゃんたちを捨てるなんて出来ないんだ!!

『でも、ソウもあの家出て、東京で好き勝手やってるじゃない。』

 ―オレは勉強に来たんだ!

『本当?』

 ―本当に決まってるだろ。

『・・・・・・ウソツキ・・・・』

 ―・・・・・

 ―そうだよ!!オレはお前を探しに来たんだよ。大して好きでもない美術もお前が居そうだから選んだんだよ!!

 ―カナ、カナ…会いたいよ。


 もう思い出なのか、妄想なのか境目が曖昧で。
 カナと話せるならこのまま居たい気もした。


 急に激しい吐き気に襲われ、飛び起きてトイレに駆け込んだ。
 汚いけど、飲んだ分全部くらい滝みたいに吐いた。
 ほんと何にも食べてないから、酒しか出ないし、しまいには胃液を出した。

 苦いし、苦しいし。

 もう死んじゃうかと思った。

「やべー……だれか…死ぬ。」


 その時、ヴィーンヴィーンと、スウェットのポケットに捻じ込んであった携帯が震えた。

 「たすかったーーー」
 画面には知らない番号だった。